6 テクノロジー

 これまで述べてきた通り、大型アプリケーションの分散化を進めるという目標のもとでは、Ethanimは必然的に既存のブロックチェーンモデルを脱却し、新たなブロックチェーンフレームワークを採用する必要がありました。また、新しい技術を積極的に取り入れ、システムを柔軟にアップグレードしていくことも重要です。

6.1 テクノロジーの概要

6.1.1 基盤革命

 トラステッドコンピューティング技術に基づくTrias layer -1ブロックチェーンソリューションを導入することで、「信用のないノード間でコンセンサスを得る」という既存のモデルを「ノードに信用を与え計算させる」というモデルに転換。従来のブロックチェーンの性能的限界を抜本的に改革しました。

6.1.2 テクノロジーのレゴ

 仮想GPU、クロスチェーンブリッジ、エッジコンピューティング、分散型ストレージなどの技術をプラグイン方式で融合し、継続的に拡張・進化可能なメタバースのための包括的なソリューションを形成しています。

6.1.3 永続的コンピューティング

 アプリケーションのステータスをスナップショットとして永続的に保存することで、たとえアプリケーションが改ざんされたり、停止したりしても、チェーン上に保存された状態のスナップショットをもとに、誰でもいつでもアプリケーションを元の状態に戻すことができ、アプリケーションの分散化、安全性、永続性を確保します。

6.1.4 既存の開発言語を完全にサポート

 開発者ファーストの開発手段は、エコシステム確立のための重要な基盤です。 Ethanimは、開発者が慣れ親しんだ開発言語を使って大規模な分散型アプリケーションを開発することをサポート。開発者がブロックチェーンアプリケーションを開発する際の敷居を大幅に下げます。

6.1.5 豊富なデジタル資産プロトコル

 さまざまな種類のデジタル資産を作成するアプリケーションをサポートしており、他のブロックチェーンシステム上のアプリケーションが公開したデジタルアセットと互換性があります。 メタバースにおける様々な種類のデジタル資産の複雑なシナリオのニーズを満たしつつ、ユーザーが自由にメタバースを作成することを支援するための基盤を提供します。

6.2 Ethanimのシステム構造

6.2.1 メインチェーン

 Ethanimの全体的なアーキテクチャは、マルチアプリケーションチェーンのブロックチェーンシステムであると言えます。メインチェーンはすべての「アプリケーションチェーン」のセキュリティに責任を持つとともに、イーサリアムや他のパブリックチェーンのレイヤー2でもあり、zk RollupやOptimistic Rollupなどのプラガブルなクロスチェーンブリッジをサポートしています。 メインチェーンのセキュリティは、レイヤー1のパブリックチェーンによって強化することができます。

 メインチェーンのノードは「コンセンサスノード」と「検証ノード」で構成されます。

コンセンサスノード  

コンセンサスノードは、メインチェーンの維持、ブロックチェーン台帳の保存、EVM対応仮想マシンのサポートを行い、開発者はイーサリアム上に展開されたスマートコントラクトをシームレスに移行したり、ERC20やERC721などのプロトコル規格に対応したトークンを発行することが可能で、非常に高速でゼロコストのトランザクション体験を得ることができます。コンセンサスノードはVRFアルゴリズムを実行することで、トラステッドステータスマシンの検証を行う検証ノードをランダムに割り当て、検証結果に応じて、トラステッドステータスマシンが動作を継続できるかどうか、ステータススナップショットの出力を継続できるかどうかを決定します。

 コンセンサスノードは、TEE 技術(TPM、TXT、Intel SGX、ARM TrustZone 等)とグラフコンピューティングアルゴリズム(HashgraphやDAGに類似)を組み合わせた Trias Leviatomネットワークの異種コンセンサスグラフ(HCGraph)アルゴリズムを採用。異なるTEEにより、Leviatomは誤動作しているノードを迅速に特定することができ、インテルSGXベースのコンセンサスではインテルの集中型オンライン認証サービスへの強い依存が必要になるといった特定の技術プロバイダーへの依存を排除することができます。さらにHCGraphのゴシッププロトコルは、冗長なTEE認証を大幅に削減しつつ、スケーラブルで堅牢な信用ネットワークを維持します。

 コンセンサス層の上にレイヤーを重ねるコンセンサスの加速化技術(レイヤー1やレイヤー2の改善など)とは異なり、Leviatomはコンセンサス層の「下」にレイヤーを掘ることでパフォーマンスの問題を解決します。すなわちLayer-1の強化です。Layer-1は、投票するノード間の信頼関係の構築に重点を置いています。 その主な目的は、「嘘」をつくことが最も困難なノードセット、つまり、認識されることなく予期せぬプログラムを実行する難度が最も高い点を特定することです。また、ノード間のリモート証明を行う際の冗長性を管理するという課題は、数学的マルチファクション演算を応用した信頼関係伝達のマトリックスを導入することで解決されます。このマトリックスにより、Leviatomは最も高い値を持つ少数のノードを投票ノードとして選択するだけで、対象となるトランザクションのコンセンサスプログラムを実行することができ、コンセンサスの効率が大幅に向上します。

 同時に、コンセンサスノードは、アプリケーションのスナップショットのインデックスハッシュをブロックチェーン台帳に保存。アプリケーションのリカバリーを要求された際には、永続的なファイルシステム内からスナップショットを検索をします。

検証ノード  

 認証ノードは、サーバー、ノートパソコン、携帯電話など、誰でもコストをかけずに設置・導入することができます。認証ノードは、トークンをステーキングしてネットワーク中のトラステッドステータスマシンに対してハートビートと検証を行いコンセンサスを得ます。また、認証ノードの数は需要に応じていつでも拡張することができるため、あらゆる規模のアプリケーションのセキュリティニーズに対応することができます。

 検証者:検証ノードの実行者は検証者と呼ばれ、Ethanimシステムの「バーチャルマイナー」であり、トラステッドステータスマシンの信用ステータスに対して署名付きの投票を行います。これらの投票は全てメインチェーンに記録され、その内容は主に、検証者のアドレス、検証者のステータス、証明書、検証したトラステッドステータスマシンのアドレスなどです。検証者はメインチェーンに登録して有効化する必要があります。

 委員会:委員会とは、メインチェーン上で動作するVRF(Verifiable Random Function)アルゴリズムによって無作為に割り当てられた動的検証ノードのサブセットで、割り当ての結果は検証者によってローカルに検証可能ですが、攻撃を避けるためにネットワークからは隠されています。各サブセットは、ネットワーク内のトラステッドステータスマシンのコンセンサス投票を行います。 セキュリティを高めるために、有効なノード数に対するセキュリティの閾値を超えた投票のみがメインチェーンに認可され、それ以外は複数回の投票が行われます。

 検証期:委員会の構成は固定ではなく、周期的に変わります。この周期を検証期と呼びます。検証期間は、検証が適切に行われ効果的にコンセンサスが得られ、かつサブセット内の検証ノードが共謀して悪さをするのを避けられる合理的な長さに設定されています。検証ノードは相互に検証し合い、報酬を得ることができます。

6.2.2 トラステッドステータスマシン

 トラステッドステータスマシンはEthanimのコアコンポーネントであり、一つの「サンドボックス」のようなものです。コンピューティングノード上で動作し、大規模なメタユニバースアプリケーションのサーバー側を信頼された環境に配置。信頼された状態のマシンがプログラムに対して信頼された検証を行うことで、複雑な計算による検証を信頼された状態の検証に簡略化します。これによって、コンセンサスの効率を大幅に向上させ、分散型アプリケーションのスループットを新たな桁に引き上げ、ブロックチェーンのコンセンサスアプローチを完全に革新します。

 Ethanim上のアプリケーションは全て信頼された状態のもと実行されます。トラステッドステータスマシンは、SHA256を使用してアプリケーションコードの完全性を随時確認し、ホワイトリスト・シーケンス検出器を使用してプロセスを継続的に検証して信頼値を決定。システムが改ざんされていないかどうかを検出します。 アプリケーションが異常に動作していたり、トラステッドステータスマシン自体が破損していることが判明すると、検証ノードに信用ステータスが偽であるという情報を出力し、プログラムの動作やデータの送信を遮断。攻撃による被害を最小限に抑えることで、アプリケーションシステムの動作の健全性を確保します。

 同時にトラステッドステータスマシンは継続的にステータスのスナップショットを複製してストレージノードに保存し、メインチェーンにデータのハッシュインデックスが記録されます。メインチェーンのハッシュインデックスに基づいてアプリケーションのステータスのスナップショットをアドレス指定することで、誰もが任意の瞬間にアプリケーションを完全に信頼できる状態に復元することができます。

 これによってアプリケーションは分散性とパフォーマンスを兼ね備え、永続的に動作することが可能になります。

6.2.3 永続的なファイルシステム

 永続的なファイルシステムは、ストレージノードが運営・維持する分散型のストレージシステムです。 誰でも自分のハードディスクを提供して、ストレージノードになることができます。

 ストレージノードは主に、トラステッドステータスマシンが出力したステータスのスナップショット、アプリケーションのコードファイルなどを保存し、ファイルは複数のハッシュ値に分解され、暗号化の後、保存の証拠を検証する際に使用されるマークルツリーが生成されます。同時に、コンセンサスノードによって、ファイルのハッシュインデックスがメインチェーンのブロックチェーン台帳に記録されます。アプリケーションの復元が必要になった場合、コンピューティングノードは、トラステッドステータスマシンを実行し、メインチェーンからハッシュインデックスを照会してストレージノードでアプリケーションコードとスナップショットファイルを取得し、任意の時点でアプリケーションを任意の状態に復元することができます。

 永続的なファイルシステムがローンチするまでは、暫時その他の分散型ストレージシステムを使用します。

6.2.4 Meta GPU

 メタバースでは、より大規模で高品質な画像処理が求められていますが、一方でアイドル状態のGPUは世界中に数十億個も散らばっていると言われています。 同じIDCにある物理マシンでも、計算資源を合理的に割り当てられない場合があり、その結果あるデバイスは過負荷で動作し、他のデバイスはアイドル率が高くなり、需要と浪費の対立が顕著になっています。

 Meta GPUは、メタバース向けの画像コンピューティングソリューションであり、Ethanimの重要なコンポーネントの一つです。仮想リソースプール、分散コンピューティング、エッジコンピューティング技術を用いて、散在しているアイドル状態のGPUリソースを仮想化してプールに集約し、アプリケーションからのオンデマンドコールをサポートすることで、システムの計算能力を向上させつつ、より分散化させることができます。メタバースアプリケーション、特に大規模なゲーム系アプリケーションの画面描画にとっては、この仮想GPU技術は欠かせないものになります。    メタバースのアプリケーションは、従来のアプリケーションよりもはるかに多くの画像処理を必要とするため、中央集権型コンピューティングへの圧力は高まる一方です。EthanimのMata GPUは、GPUハードウェアデバイスを演算能力を単位として仮想的にリソース化することで、小規模なGPUデバイスの演算能力をプールして大規模な計算を処理したり、大規模なGPUデバイスの演算能力を分割して小規模な計算を複数並行して処理したりすることで、リソースの利用効率を向上させます。同時に、エッジコンピューティング技術を利用することで、ユーザーに最も近いコンピューティングリソースに仕事を割り当てることができ、ネットワークの遅延がアプリケーションに与える影響を軽減し、オンラインアプリケーションの使用感を大幅に向上させることができます。

 また、Meta GPUは、GPUコンピューティングリソースをハードウェアの観点から最適化したリファクタリングであり、アプリケーションのソフトウェア側には影響を与えません。開発者は従来のアプリケーション開発の手法を引き続き使用することができます。

 テクノロジーのさらに詳細な情報については、テクニカルホワイトペーパーの中で解説します。  

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